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大人のためのADHDナビ

体験談

社会人5年目・Sさんの場合

「衝動買い」が止まらない… コントロールできない自分が不安でした。

監修:長崎大学大学院精神神経科学 准教授
今村 明 先生

仕事帰りは、アフターファイブを満喫

Sさん(20代・女性)は、都内で営業の仕事をしていました。明るく、活動的なSさんは営業成績もよく、入社5年目になって後輩もでき、毎日やりがいを持って仕事に励んでいました。
そんなSさんの一番の楽しみは仕事帰りのプライベートタイム。同僚と食事に行ったり、学生時代の仲間と飲み会をしたり、デパートで好きなブランドショップを覗いたり…。時間を見つけては、いわゆる“アフターファイブ”を満喫していました。また、気前のいい性格のSさんは、後輩を誘って食事をご馳走することもよくありました。
実家暮らしのSさんは家賃などを支払う必要がなく、自分のお給料を自由に使える生活を謳歌していたのです。

買い物と飲み会でストレス発散

仕事は一見順調そうに見えましたが、遅刻や忘れ物、うっかりミスが多く、先輩や上司から注意を受けることも少なくありませんでした。そのたびに「気をつけなくちゃ」と反省するのですが、数日経つとまた似たようなミスを繰り返してしまうのでした。仕事でミスをして落ち込んだときは、好きな洋服を買ったり、友人と飲み会に行ったりすると、気持ちがスカーっとしてストレス解消になるのでした。

止まらない欲求。もしかして依存症?

Sさんの買い物や飲み会による浪費はだんだんとエスカレートしていきました。デパートで欲しい物を見つけると、“我慢すること”が苦手なので、迷いながらも結局購入してしまうのです。また、“断る”ことも苦手なSさんは、同僚や学生時代の友人との飲み会の回数も多く、社会人になってからも貯金とは無縁の生活を送っていました。そんなある日、同居しているお母さんが、クレジットカード会社からのSさん宛の督促通知を見つけました。浪費を続けた結果、Sさんの銀行口座の残金が不足し引き落としができなくなってしまっていたのです。
Sさんは、小さい頃から落ち着きがなく、深く考えずに行動してしまうタイプでした。小学校でみんなが座っているときに一人で立って動き回っていたり、衝動的に道に飛び出て車に轢かれそうになったり…。お母さんは、そんなSさんをずっと心配していました。最近の節度を超えた浪費にも気づいていて、ちょくちょく注意をしていたのですが、この督促通知を目にして、「もう、このまま放っておいてはいけない」と思い立ちました。
Sさんのお母さんは、誰に相談したらいいのか悩みましたが、近所のかかりつけ医の紹介を受け、Sさんを連れて大学病院の精神科の専門医を訪ねることにしました。

母と一緒に専門外来を訪ねて

緊張しながら専門医を訪ねたSさん親子を、医師は穏やかな表情で迎えてくれました。Sさん親子は安心して、Sさんの日常生活の様子や、限度を超えた浪費などについて打ち明けました。また、買い物や飲み会によってストレス発散していること、それによって自己嫌悪に陥ることも多いが、それでもやめられないことなども正直に伝えました。医師はその話に深くうなずきながら、今度は会社でのSさんの様子について尋ねました。うっかりミスや忘れ物が多くありませんか、提出物の期限が守れなかったり、約束を忘れてしまったりしませんかと、いくつか質問を受け、Sさんはほとんどが自分に当てはまるのでびっくりしました。そしてSさんのそうした特徴は、子どもの頃から続いていることも確認されました。
いくつかの検査や問診を受け、Sさんは“ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)の可能性がある”と伝えられました。ADHDには、「不注意(忘れ物が多い)」「多動性(落ち着きがない)」「衝動性(考えなしにすぐ行動する)」といった特性があるということ。そして、Sさんの会社でのトラブルはADHDの症状のせいかもしれないと説明を受けました。
ADHDの人は、幼い頃から日常生活に困難を感じていることが多く、それがストレスになり、不安症やうつなどの併存疾患を引き起こしている場合があるのだそうです。Sさんの過度な浪費行動も、ADHDによる心的ストレスが原因となっているのかもしれないということでした。

胸の中のモヤモヤが晴れ、心が軽くなった

Sさん親子は、医師からADHDの特性について説明を受け、治療を始めることにしました。まずはカウンセリングを通して、Sさんの一日の生活習慣をひと通り見直し、改善ポイントを探しました。仕事については、忘れ物チェック表をつくること、気づいたことはすぐメモを取る習慣を付けること、毎朝その日の行動計画表を作ることなど。買い物や飲み会については、ひと月の自分のお小遣いと貯金額を決めること、しばらくの間クレジットカードの使用を控えることなど、具体的なアドバイスをしてくれました。
また、ADHDを改善するための薬についても説明を受けました。Sさんは服薬と同時に、医師からのアドバイスをできることから一つ一つ実践してみることにしました。
すると、少しずつ仕事のミスが減り、上司や先輩から注意されることも少なくなり、以前より仕事が楽しいと感じられるようになりました。衝動買いや頻繁な飲み会も減り、自己嫌悪や罪悪感に苦しむこともなくなりました。Sさんは、いままで胸の中でモヤモヤしていた雨雲みたいなものが消えつつあり、心がとても軽くなっていることに気づきました。あのとき、母に背中を押されながらも思い切って受診してよかったと思いました。そして貯金がたまったら、温泉旅行に招待したいと考えています。

ADHD専門医インタビュー

うつや依存症の背景には、ADHDが隠れていることも
日常生活に困難を感じたら、早めに専門家に相談を

ADHDは、子どもに特有の疾患だと考えられてきましたが、その症状の一部は成人になっても持続することがあります。実際にADHDの症状に悩んでいる成人も少なくありません。ADHD(Attention-Deficit / Hyperactivity Disorder:注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)とは、脳機能の不全によって、日常生活にさまざまな困難を抱える発達障害の一種です。ADHDには、「多動性」「衝動性」「不注意」の3つの大きな特徴が挙げられます。また、Sさんのケースからもわかるように、ADHDの患者さんは、自分の感情や意欲をコントロールすることが苦手です。

また、成人患者さんでは、ADHD単独ではなく、他にも別の疾患を併せもっている割合が高いといわれています。ADHDに続発する併存疾患として一番多く挙げられるのは、うつや不安症などです。
その他にも、双極性障害、アルコール依存症、買い物依存症などさまざまです。Sさんのように、ADHDのために幼い頃から失敗体験を繰り返していると、それが心的ストレスになり、続発的に他の疾患を引き起こしてしまうことがあるのです。

みなさんに知っていただきたいのは、「ADHDは決して悲観するべき疾患ではない」ということです。コインの裏表と同じで、そのときたまたまマイナス面が表に出ていたとしても、それをプラスに変えることができるのです。認知行動療法やコーチング、薬物療法などによって、マイナスの面が緩和され、プラス面をうまく引き出せるようになれば、それは他の人にはない“大きな強み”に変えることもできます。

ですから、もしいま日常生活に困難を感じることがあったら、ぜひ勇気を出して専門家に相談してほしいと思います。敷居が高いと思われている方もいるかもしれませんが、そんなことはありませんよ。一緒によりよい打開策を探していきましょう。

親子のADHD体験談も掲載しています。

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