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大人のためのADHDナビ

体験談

大学生・Fさんの場合

気がついたら、大学留年の危機に… サークル活動への参加も憂鬱になっていました。

監修:こころとそだちのクリニック むすびめ 院長
田中 康雄 先生

充実した大学生活のはずが…

大学生活2年目のFさん。商学部に在籍しつつ、テニスサークルの活動にも積極的に参加しアクティブな毎日を過ごしていました。
いつも陽気で活発な印象のFさんは、友達も多く、心身ともに充実しているように見えました。人前ではいつも明るく、悩みなどなさそうなFさんですが、実は内心では「どうしていつも自分はダメなのだろう…」と思い悩んでいたのです。

大学の単位が足らず、留年騒ぎに

学年末が近づき、友人と進級についての話になったとき、Fさんは一人愕然としました。友人との会話の中で、自分の出席日数が単位取得の規定数に満たないかもしれないことに気づいたのです。レポートの提出期限を守れなかったことも何回かありました。Fさんの脳裏には、“留年”の2文字が浮かび、頭の中が真っ白になりました。
大学では、中学校や高校とは違って、学生自身が受講するカリキュラムを選択します。講義への出席日数やレポート提出、試験の点数などで単位を取得し、それによって進級や卒業が決まるシステムになっています。つまり、学生本人の自己管理能力が大きく関わってくるのです。Fさんは、試験結果はまあまあ良かったのですが、欠席や遅刻が多く、レポートの提出期限を守れなかったことなどが問題でした。
大きな不安を抱きながら、数日間眠れない夜を過ごしたFさんですが、ギリギリのところで留年は免れることができました。深い安堵感と同時に、「どうしてみんなと同じことができないのだろう」という自己嫌悪の気持ちでいっぱいになりました。

楽しいはずのサークル活動も憂鬱に

Fさんの趣味は、高校生のときに始めたテニスです。大学でも迷わずテニスサークルに入会しました。Fさんはすぐに気の合う仲間ができ、普段の練習だけでなく、飲み会や合宿などのイベントにも積極的に参加していました。しかし、その一方で、集合場所への遅刻や忘れ物が目立ち、仲間に迷惑をかけてしまうことも少なくありませんでした。前回の練習では預かっていたテニスコートの鍵を忘れ、先輩から厳しい注意を受けました。仲の良かった同級生とも、Fさんの不用意な一言が原因で気まずくなってしまい、以前のように上手くコミュニケーションがとれなっていました。あんなに楽しくて大好きだったサークルなのに、Fさんはだんだん顔を出すのが憂鬱になっていました。

専門外来で医師に相談してみると

そんなある日、Fさんはインターネットの情報で「ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)」という疾患があることを知りました。そのサイトにはADHDの特徴が記載されており、Fさんに当てはまるものがいくつかありました。気になったFさんは、発達障害を診療しているクリニックを訪ねてみることにしました。
初診の際、Fさんは医師に、大学を危うく留年しそうになったことや、サークルでの人間関係に対する不安、人が普通にこなしていることを自分ができずに落ち込んでいることなどを打ち明けました。医師は穏やかな表情で、ゆっくりと話を聴いてくれました。そして、Fさんの小中学校の頃の様子について尋ねられたので、小さい時から忘れ物が多く、片付けが苦手で、だらしがないと先生や両親によく叱られていたことを思い出しながら伝えました。その後いくつかの質問や検査を受け、Fさんは、“ADHDの特徴がある”という診断を受けました。
医師は、ADHDは子どもに多いと以前は考えられていたが、成人でもADHDの症状で悩んでいる人がいることや、治療によって改善が望めることなどを丁寧に説明してくれました。いまの自分の状況を少しでも改善したいと思ったFさんは、医師と相談し、心理社会的療法(カウンセリングなど)と薬による治療を始めてみることにしました。
心理社会的療法では、FさんのADHDの特性をよく認識した上で、まず生活習慣の見直しから始めます。そして日常生活で適切な行動が取れるようにするための工夫を医師と一緒に考えていきます。薬を使った薬物療法は、心理社会的療法をサポートするものです。心理社会的療法と薬物治療の2つを組み合わせて行うことによって、ADHDの治療効果を高めることができると医師は説明してくれました。

治療を始めてまもなく、気持ちが上向きに

治療を始めてみると、Fさんは自分の気持ちが晴れやかになってきたことに気づきました。講義への遅刻が少なくなり、難しいと思っていた講義内容も以前よりスムーズに理解できるようになりました。心身ともに余裕ができて、だんだんと自分に自信がもてるようになってきました。面倒くさいと思って、いままで欠席していた夕方のゼミにもチャレンジしてみることにしました。
サークル活動では、次の合宿の幹事をサポートする役割を担うことになりました。多人数の合宿の計画を段取りよく進めるFさんは、同級生の中でもリーダー的な存在になりつつあります。
「最近、なんだか毎日が充実しているなぁ」。そう思いながらFさんは、悩みを一人で抱え込まずに、思い切って専門医に相談してよかったと感じています。

ADHD専門医インタビュー

ADHDの特性を理解して、
“あなたに合った対処法”を一緒に考えましょう

ADHDとは、脳機能の不全によって、日常生活にさまざまな困難を抱える発達障害の一種です。ADHDには、「多動性」「衝動性」「不注意」の3つの大きな特徴が挙げられますが、成人のADHDでは、とくに「不注意」が一番多いと言われています。
Fさんのように『注意力にかける、忘れ物が多い』(不注意)という特徴が目立ち、しかもそれが子どものころから続いているような場合はADHDの可能性があります。

大学生では、Fさんのように進級問題でつまずくADHDの方も少なくありません。学力の問題よりも、提出物の遅れや、講義室の間違い、遅刻などがネックになっています。それからサークル活動では、上の立場になって管理能力を求められたときに戸惑ってしまうケースもよく耳にします。

ADHDの治療で大切なのは、まず、“ADHDの特性を含めた患者さんの性格的特徴”を理解することです。これは医師と患者さんの共同作業です。そして、その特徴を理解した上で、ここは気をつけよう、ここは相談しよう、ここは人に頼もう、ここは計画的にやっていこう、という振り分けをする。そうして“自分にあった対処法”を一緒に見つけていきます。そうすると、物事を先送りしたり、失敗して自分を責めたりすることがぐっと少なくなります。
また、学生の患者さんの場合は、現時点の課題だけでなく、進学や就労後も視野に入れて治療プランを立てていきます。
もしいま、日常生活で困難を感じている方がいたら、どうか自分を責めたり、一人で考え込まないでください。あなたは一人ではありません。専門家に相談して、一緒によりよい対処法を見つけていきましょう。

親子のADHD体験談も掲載しています。

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